コラム
非上場企業の株価の評価方法はどう変わる?有識者会議#5-6の概要と考察
取引相場のない株式の評価に関する有識者会議ですが、
8月20日に第5回、9月16日に第6回が実施されています。
内容を確認すると、事務局(国税庁)からは「新評価ルールに関しては何も確定していない」という言葉はありながらも、
課税庁の中では骨子はほぼ固まっており、後はその諸調整を行っている段階(有識者の議論を経て確定した、という大義名分を得る段階)という印象を受けます。
改正の方向性に関しては後述しますが、中小企業の事業承継の実態を認識している商工会議所や税理士会に属する委員からの反対意見に関してはほぼ聞く耳を持たず、
実務からは遠い学者や分野違い(M&A)の有識者の意見を是として、事務局が進めたい論調に沿って方針を固めている感が否めません。。。
現状の方針であれば、地域を支える優良企業の事業承継に大きな支障をきたすことは必至です。
事務局側としては、「あくまでこの有識者会議は評価方法を決めるための場」という姿勢を一貫していますが、
「どのように相続人がその税金を支払うのか(支払うことができるのか)」まで、税制まで踏み込んでTOTALで検討してもらわない限り、
この議論はいつまでたっても片手落ちであり、日本の事業承継にとってはマイナスが大きいと強く感じてしまいます。
(今の方向性であれば、優良企業の創業者は相続税は払い切れませんし、払えたとしても企業や創業家における負担が大きすぎます。)
以下現在の有識者会議における改正の方針を記載させて頂きます。
【現在の方向性】
◆評価方法
現行:純資産価額と類似業種比準価額の併用(会社規模によって適用比率が異なる)
新:利益残余モデルに一本化(会社規模に関わらず一律適用)
◆評価対象
現行:株主が直接保有している法人(例えばホールディングス)が対象
新:株主が間接保有している法人(ホールディングスが保有する子会社)も対象
◆持株会がある場合のオーナー株式評価
現行:オーナーの持株比率に応じて評価が確定
新:持株会保有株(保有額)を除いた価格をベースにオーナー評価額を確定
※例えば、純資産1億円、総発行株式10,000株⇒純資産価額(相続税評価額)@10,000円、簿価(持株会売買額)@500円で、オーナーが7,000株(持株比率70%)、持株会が3,000株(持株比率30%)と想定した場合
現行:オーナーは10,000円×7,000株の7,000万円が財産評価額となる。
新:1億円から持株会の売買価額150万円(3,000株×500円)を差し引いた9,850万円が財産評価額となる。
一方で、有識者会議以外の場では、事業承継税制の改正(2028年~)も検討がされており、
日経新聞で紹介されていた内容では、一定期間の条件を満たすと(例えば年平均で3%以上の給与増額)、免除措置がとられるなど、こちらは「改良」となる可能性が高いです。
有識者会議の中で事務局からは「優良企業の円滑な事業承継の観点から事業承継税制があるのではないかと考えている。」という発言があり、
優良企業に関しては評価額が上がるが、その場合は事業承継税制を活用すればよい、という考えを持っていると推察できます。
(非常に乱暴な論調ですが。)
【2027年中に検討・実施すべきポイント】
新ルールが適用される2028年までに検討すべきポイントは以下の通りです。
◆現在の株価が自社にとって有利か不利か
・類似業種比準価額が安価な場合には有利
・会社規模が大きい場合には有利になるケースが多い
特にHD化等を行っている場合、持株会が存在する場合には、影響大!
◆後継者は決まっているか
・確定している場合には株式の移転を検討
・まだ確定していない・後継者が若い場合には株式は移さないことを推奨(結果税金以上に高くつく可能性が高い)
※将来的な事業承継税制の適用等に期待。
◆分散株主は存在するか
・安価に集約する場合にはラストチャンスになる可能性有り
・分散株主が親族外の場合には持株会の設立等も検討する
※相続税対策というよりは、将来的なトラブルを防止することを優先。
なお、新評価方法の大本命である利益残余モデルに関しては、
より詳細が決まったタイミングで当コラムでも紹介したいと思います。
有識者会議の使用資料、議事要旨を見るたびに頭が痛くなりますが、
税制に振り回され過ぎず、あくまで本質論を忘れずに検討を行いたいですね。
逆に言えば、企業を振り回し過ぎる税制改正は本末転倒であると思いますが。。。
今後も動向を追っていきたいと思います。