ひふみコンサルティング株式会社ロゴ

無料相談
MENU

コラムCOLUMN

  • HOME
  • コラム
  • 非上場企業の株価の評価方法はどう変わる?有識者会議#2、#3の概要

非上場企業の株価の評価方法はどう変わる?有識者会議#2、#3の概要

2026.07.17コラム

前回に引き続き、今回のコラムでは、第二回、第三回にて議論された内容に関してみていきたいと思います。

当該有識者会議に関しては、第二回:2026年5月11日、第三回:2026年6月4日にて各有識者による意見が共有され、第四回:2026年7月3日に有識者の意見を踏まえた一旦の取り纏めがされています。

まずは第二回、第三回の有識者会議にてどのような意見が各有識者から出されたのか、その内容を確認したいと思います。(※内容の要約においては、公式の議事録の内容をベースに、一部筆者の編集が入っております。)

【第二回有識者会議内容】
1. 渋谷委員(中央大学)

財産評価の原則的な考え方、実際の適用シーン等を事例等を交えて客観的に整理。
(意見内容)
・相続税法の「時価」の定義としては「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価額」であり、世界的に見ても大体同じ。
・「時価」という概念自体は、幅のある概念と言われており、課税上の評価においては、いわゆる 「固めの評価」をされるのが一般的。
・取引相場のない株式については、事業承継の観点から評価額が抑えられてきた。このような配慮は評価方法ではなく、特例措置などによる方が平等ではないか。

2. 弥永委員(明治大学)
会社法の観点から取引相場のない株式の評価について説明。
(意見内容)
・会社法上は、企業の価値を公平に分配するとどうなるかという視点がポイントとなる。(基本は純資産価額の考え方)
・会社法の裁判例(公刊物記載)では、昭和62 年を最後に類似業種比準方式は評価方法の要素としても採用されることがなくなっており、現在はDCF法が採用される傾向にある。
・本来の企業価値は清算価額を下回ることは考え難く、清算価額より低い金額を相続税評価額とすることを認めるのであれば、それが政策的に必要と考えられる場合であり、更には政策的に必要と言うことであれば、評価方法だけの議論ではなく、事業承継税制などで納税の配慮措置を講ずることが筋ではないか。
・税法上の評価額(低い価額)に会社法の評価額が引っ張られてしまう/影響を受けてしまうことは望ましくない。

3. 熊谷委員(日本M&Aセンター)
M&A実務における中小企業の企業価値評価について説明。
(意見内容)
・M&A実務においては、現実の財政状態と経営成績をバランスよく反映させることができる「時価純資産価額」に「営業権」を考慮する方法を採用するケースが多い。
・税務上(相続税評価で主に採用)と会計上(M&A評価で主に採用)の数字は異なるため、法人税法上は容認されていないが会計ベースで必要となる負債(各種引当金等)を計上するほか、資産の含み益等も加味して時価純資産を算定する。
・営業権算定のベースとなる正常利益の算定に当たっても、高額な役員報酬、節税目的の保険やオペレーティングリースなどの損益についても補正を行い、通常通り経営した場合の利益(正常利益)を算出している。

【第三回有識者会議内容】
1. 阿部委員(日本商工会議所)

「中小企業と事業承継に係る税負担」について説明。
(意見内容)
・第一回目の分科会にて事務局から示された「基本的な4つの観点」という資料について、5つ目の観点として、「円滑な事業承継に資する評価」を加えるべきだと考えている。
・第二回有識者会議にて取り上げられた「M&Aや会社法における評価」と、「相続における評価」とを同等に考えることに対して大きな違和感があり、改めて「評価の目的」について、明確に整理をした上での議論が必要。
・努力して事業を成長させた結果、株式の評価額が高くなり、それにより税負担が重くなり、次世代への事業承継に支障が生じている現状がある。
・事業継続が前提にもかかわらず、中小企業の株式が解散価値で評価されることには大きな違和感があり、実質的に換金性がないに等しい状況にもかかわらず、極めて重い税負担が課されることは、担税力の観点からも公平とはいえないと考えられる。
・現在の相続税評価額に採用されている純資産価額方式は、実態の純資産価値に対して評価が高すぎる。本来は退職金等の簿外負債の金額なども反映すべき。
・一方的に評価だけを論じるのではなく、中小企業の役割・期待値も加味しながら、株式評価と税負担を一体的に議論すべき。

2. 玉越委員(日本商工会議所)
「取引相場のない株式の評価に係る課題」について説明
(意見内容)
・時価とは、通常、不特定多数間で自由な取引が行われる場合に成立する価格と定義されているが、そもそも取引相場のない株式は不特定多数間の自由取引で価格が成立するものではない。取引相場には客観的な時価は無く、ある意味、フィクションとして作っていくしかないもの。
・過去にも円滑な事業承継の観点から、類似業種比準方式の見直しが行われてきた。評価だけ取り上げて議論するのではなく、評価の中に税負担の問題も考慮されてきたという事実を認識した上での議論が必要。
・事業承継税制の特例措置があるからといって、「評価の問題」だけを切り離して、別個に取り組んで見直せば良いとは考え難い。事業承継税制等の適用が限定的な中で、株価の評価だけが上がれば、中小企業が今後やっていけるのかは疑問。
・実際の清算時に必要なコスト等も加味すると、現行の純資産価額方式は必ずしも実際の清算価値を表しているものではなく、通達における純資産価額の半分以下が本来の清算価値たる純資産価額と言える。
・租税回避を目的とした極端な事例への対応に関しては、評価体系全体を変更するのではなく、個別対応によって解決可能ではないか。

3. 大畑委員(日本税理士会連合会)
「取引相場のない株式の評価」において、実務的な問題点、今後の見直しの方向性等について説明。
(意見内容)
・現在の株価算定上の不具合(会社規模が大きくなるほど株価が割安になる。配当無し/赤字の状態が2期以上続くと株価が割高になる。など)が発生しており、納税者の理解を得難いものも多い。
・株価算定に関しても、純資産価額の算定に関しては資料収集・各種資産の評価洗い替えに大きな負荷が発生している。
・評価方法の計算ルール上、恣意的な株価操作がされている実態がある。
・評価の見直しに当たっては、継続企業を前提とした評価の安全性を考慮する必要があり、その場合は売却を前提とした時価純資産ではなく、税務上の簿価純資産の採用についても検討すべきである。
・担税力の適正化という観点から、新たな制度として現行の事業承継税制に加えて一定の評価減制度などの支援措置も必要。

4. 櫻井委員(昭和女子大学・神戸大学)
「会計学における企業価値評価の研究状況」について説明。
(意見内容)
・インカムアプローチ(配当割引モデル・DCFモデル・残余利益モデル)のどのモデルを使用するかに関しては、実務上の判断で選択する必要がある。
・①適用が不可能または無意味なケースがあるかどうか、②モデルが必要とする将来のデータの予測難易度、③ターミナル価値への依存度という観点で考えると、実務上は残余利益モデルが優れていると考えられる。

【第二回、第三回の有識者会議を受けた所感】
非上場企業の事業承継に関与している立場からすると、最も主張が近かったのは、日本商工会議所(阿部委員・玉越委員)の意見でした。
事業承継に使用する時価(相続税法上の時価)と、清算時・売却時に使用する時価(会社法・M&A時の時価)を一緒に議論することは無理があるという主張は、第一回有識者会議の資料を見た際に感じた違和感を的確に指摘してくれており、心の中で「その通り!!!」と叫んでしまいました。笑

特に、玉越委員の「上場企業や不動産、もしくはM&Aの提示価額のような客観的な時価が分かる市場が無い以上、非上場企業の株価に関してはフィクション」という表現は言い得て妙で、
そもそもどこまで行ってもフィクションの域を出ないのであれば、フィクション≒ルールを作る側の恣意性・狙いの整理が必須で、今回の評価ルール改正の目的、非上場企業の株式の事業承継そのものに関する根っこの考え方(要するにルール作成の前提となる目的や狙い)に関する議論は避けられないと感じました。

そういう意味でも、阿部委員の、『第一回目の分科会にて事務局から示された「基本的な4つの観点」という資料について、5つ目の観点として、「円滑な事業承継に資する評価」を加えるべき』という意見には大賛成(と言うかここが無ければ今後の議論の終着点が見つけられなくなる。)なのですが、
残念ながら議論の中では、事務職からは否定的な反応となっていました。
(やはり事務局・課税庁側としては今回の見直しにより、相続税評価額を上げる前提での議論なのかなと感じてしまいました。。。)

また、大畑委員の説明内容に関して、確かに株価引下げスキームの要因となっている計算ルールも存在するため、そのあたりは現行ルールの改正も一部必要になるのではと感じています。

今回は掻い摘んで有識者会議の内容をお伝えしましたが、ネット上で実際の資料や公式の議事録も公開されておりますので、もっと詳しく見てみたいという方は是非そちらもチェックしてみてください。

次回は第四回有識者会議の内容をお伝えしていきます。

お問い合わせCONTACT

まずは話しを聞いてみたい、
どのように課題を解決していくのかなどでも、
お気軽にお問い合わせください。