コラム
非上場企業の株価の評価方法はどう変わる?有識者会議#1の概要
前回2026年6月22日のコラムにて、今回の株価新ルールの議論が始まる要因ともなった、仙台薬局事例をご紹介しました。
今回は、その内容も踏まえ、第1回有識者会議の内容を確認していきたいと思います。
ちなみに有識者会議に関しては、本日7月3日時点で第四回までが実施されており、
順次その内容を確認していきたいと思います。
【第一回有識者会議:2026年4月20日】
第一回目となる会議では、以下のアジェンダで進行されました。
1. 取引相場のない株式の実態把握
2. 評価額圧縮スキームとその対応
3. 取引相場のない株式を取り巻く諸問題
4. 評価の見直しの方向性
まずは「1. 取引相場のない株式の実態把握」パートにて、令和5年度決算検査報告がなされました。
その中で株価の原則評価の実情として挙げられているのは以下の2点です。
①純資産価額に比べて類似業種比準価額の方が低い。(純資産価額の約30%の評価)
②会社の規模により、評価額に差が発生しており、規模が大きくなるほど株価が低く算定されている。(小会社の1/2ほど)
なお、上記を理解する上での大前提の基礎知識として、非上場企業株式の原則評価方法を押さえておく必要があります。
原則的評価額(相続・贈与に使用される相続税評価額)は純資産評価価額と類似業種比準価額の評価方法を算出し、
会社の規模によって、純資産価額○○%・類似業種○○%と評価を按分し、相続税評価額を算定する流れになります。
(例)
◆株価
・純資産価額 100,000円/株
※会社を清算した場合の価額。優良企業ほど高額になる。
・類似業種比準価額 50,000円/株
※仮に会社が上場したと仮定した場合の価額。配当・利益・純資産で計算されるため、計画的に下げることが可能。
◆会社規模による評価の按分割合
・大会社:上場企業に近いという考えで、類似業種比準価額を100%適用(上記の場合、相続税評価額は50,000円/株)
・小会社:上場企業に遠いという考えで、類似業種比準価額を50%・純資産価額を50%適用(上記の場合、相続税評価額は75,000円/株)
・中会社:中会社の中でも3段階に分けられ、規模によって類似業種比準価額を適用できる按分割合が変化。
一般的には、類似業種比準価額の方が純資産価額よりも安くなるため(直前に配当・利益対策をすれば尚更)、
その安い類似業種比準価額を多く使える大会社の方が株価は有利に出がちなのですが、
今回の検査報告においては、その両価額の乖離具合、会社規模による割安具合が具体的に数値で示された形になります。
仙台薬局事件において問題となった、時価(≒純資産価額)と相続税評価額(≒類似業種比準価額)の乖離実態を、
統計の数値を以って示したイメージです。
アジェンダの2,3においては、具体的な内容は割愛しますが、評価額圧縮スキームの紹介や、取引相場のない株式を取り巻く諸問題が例を挙げて取り上げられており、
最終的には4. 評価の見直しの方向性にて、現時点で事務局(≒課税庁)側で考えている方向性が示されています。
ちなみに方向性に関しては以下の4点となります。
A 『評価額の”崖”』の解消
B 評価額の『恣意性・操作性』の排除
C 実務・学術上の進展を踏まえた『今日的観点からの見直し』
D 第三者への事業承継等の動向も踏まえた評価
A・Bに関しては、1の報告にもあった通り、企業側の事前対応により類似業種比準価額等を安く抑えることが可能な点、会社規模が大きくなるほど割安になる株価算定の仕組みを問題視し、是正したい意図が表れています。
C・Dに関しては、仙台薬局事件も踏まえ、そもそも株価の考え方・算定方法として、企業価値評価や投資判断の際に用いられる評価方法も含めて考慮すべきではないかという、言わばより時価に近づけた評価方法も取り入れたいという意図が表れています。
以上の内容が議論のベースとなり、今後の有識者会議が進められていくこととなりました。
【個人的な主観】
M&A時の時価よりも、圧倒的に安い金額で相続税評価額が算出され、その金額で相続税額が計算されてしまった、という仙台薬局事件における課税庁側の後悔・反省(?)が多分に盛り込まれた内容になっており、恣意性のある感情的な資料だなというのが私の第一印象でした。
特に、相続税評価額を議論するこの場において、見直しの方向性にC・Dの内容を盛り込んでいること自体が、「課税局としては相続税評価額を時価に近づける(評価額を上げる改悪)前提。」と見えてしまい、その点はナンセンスだなと感じてしまいました。
評価額を上げる前提ではなく、下げることも含めたフェアな議論がされることを望むばかりです。
有識者会議の第二回と第三回は、各有識者会議のメンバーの発表資料・主張を中心となっていますので、
その内容に関しては次回のコラムで確認していきたいと思います。