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非上場企業の株価の評価方法はどう変わる?‐評価ルール変更の発端の一因となった仙台薬局事件を読み解く‐

2026.06.22コラム

2028年1月以降に適用予定の非上場株式に関する新評価ルールを巡り、現在も改正のための「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」が約3週間に1度のペースで開催されています。

・第一回:2026年4月20日(実態把握~見直しの方向性)
・第二回:2026年5月11日(各有識者の見解①)
・第三回:2026年6月4日(各有識者の見解②)

どう評価ルールが変わるのかの動向を予見する上で、有識者会議にてどのような議論がされているのかは非常に重要になります。

今後、当該コラムにおいても、各有識者会議にてどのような議論が行われているかを順次取り上げていきたいと思いますが、
今回は、そもそも非上場企業の株価ルール変更議論の発端となった、仙台薬局事件に関して確認していきたいと思います。

有識者会議の資料に関しては、具体的にこの事件の内容に関しては語られていませんが、
至るところに仙台薬局事件のエッセンスが垣間見えますので、新評価ルールの方向性を理解する上では、仙台薬局事件の理解が重要であると考えています。

【仙台薬局事件とは】
納税者と課税庁とで争われましたが、2024年1月18日の地方裁判所、2024年8月28日の東京高等裁判所の判決にて納税者の勝訴が確定した事例となります。
過去にも似たような事例で、課税庁が財産評価基本通達6項(総則6項)を使って否認をし、その際は課税庁が勝っていましたので、今回の件は課税庁にとってもショックが大きい案件だったと推察されます。

【仙台薬局事件の概要】
この事件に関しては、相続前に対象会社のM&A基本合意が成立していたものの、最終確定(譲渡契約書の締結)までは至っておらず、その最中に相続が起こったという内容になります。

その後の課税庁からの指摘を含めると、株価に関しては、以下の3つが存在します。
 ・相続税評価額:約8,000円/株 ※類似業種比準価額が100%適用
 ・純資産価額:約80,000円/株 ※課税庁が計算した一株当たりの金額≒純資産価額
 ・M&A成立価額:約100,000/株 ※相続後に確定したM&A譲渡価額≒純資産価額+のれん代

納税者側としては、相続時にはM&Aの基本合意段階であり、まだ最終合意まで達していたなかったため、
あくまで相続時の財産評価額として、相続税評価額にて申告を実施。

課税庁としては、基本合意がH26.05に締結、相続がH26.06に発生、最終的な譲渡契約がH26.07に締結されていること、
その後H27.02に相続人からされている相続税申告に用いられた相続税評価額と譲渡価額に10倍以上の差が生じていることから、総則6項を発動し更正処分等を実施。

その可否に関して争われたという流れになります。

【納税者側における主張の強いところと痛いところ】
納税者の主張として強い部分は「あくまで相続時の財産評価と言う点では、M&Aの金額は確定していない。」という点です。
一方主張の痛いところとしては「実際に基本合意の金額で最終金額が確定しており、相続に近接しているタイミングで利益が実現している。」という点になります。
相続のタイミングでは基本合意さえされていなかった(相続発生後に親族の働きかけでM&Aに至った)、基本合意契約と最終契約のタイミングが乖離しており、金額も異なっていた等の事情があれば、より税務上の安全性は上がったと思います。

【課税庁における主張の強いところと痛いところ】
課税庁にとっての強い部分と痛い部分は、まさに納税者側の主張と”いれこ”になります。
そしてもう一つ痛い点としては、「納税者は確かに相続税と時価との差額において得はしたが、相続税を不当に下げる行為はしていなかった。」という点です。
相続税評価と時価の乖離に目を付け、相続税を下げるために不当に評価を下げた場合(札幌のタワーマンション否認事例など)には総則6項の大義名分はありますが、今回は相続税評価額の引下げはされておらず、事後の結果に焦点を当てた更正処分だったため、そこは痛い部分になります。
(ちなみに仙台薬局事件は私は納税者寄りの考えですが、タワーマンション事件に関しては100%課税庁寄りの考えです。苦笑)

【高裁の判断】
「本件相続株式について、M&A予定価格(@100,000円)と課税庁主張の金額(@80,000円)が比較的近く、これらが相続税評価額(@8,000円)と大きくかい離しているからといって、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情(特段の事情)が存在していたということにはならない。」
と判断し、納税者の勝訴が確定しました。
裁判所としては、総則6項を適用するには、特段の事情≒租税回避を目的とした行動がある必要があり、今回の件は相続税評価額は下がっていない(当初より類似業種比準価額100%で評価)ので、特段の事情には該当しないという判断をしたということとなります。

【そこから端を発した評価ルールの見直し必要論】
この事例の影響がどこまであったのか、真偽の程度は分かりかねますが、
「そもそも仙台薬局事件においては、純資産評価と相続税評価(類似業種比準価額)に差異がありすぎる点が問題」
「相続税評価額が純資産価額に近ければ、当該事件のような問題(相続税評価額と時価の乖離)は起こらなかったのではないか」
という議論が課税庁側で起こった可能性はあり、この事件の後のR07年2月に、検査院は国税庁に対し、
「(会社の規模区分によって)取引相場のない株式を取得した者の間での株式評価の公平性を考慮するなどし、評価制度のあり方が適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要」と指摘し、評価ルールの見直しを求めました。

第一回有識者会議の内容を見ていても、見直しルールの根本的な思考として、
相続税評価額と純資産評価額(時価)との乖離を問題視している論調が非常に強いです。

今回の内容は個人的な見解も多い内容ではありますが、
上記の背景を前提に、有識者会議の内容を見ていくと、より理解が深まっていくと思います。

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