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前澤さん、それは流石にアウトです・・・

2025.07.22コラム

「前澤友作氏の資産管理会社における約4億円の申告漏れが税務調査にて指摘」というニュースが、沢山のメディアで取り沙汰されました。

全体像の詳細は公表されていませんが、
①前澤氏の持つ資産管理会社が社債を発行し
②その社債をコンサルティング会社が購入
③ほぼ同額の社債をコンサルティング会社が発行し、前澤氏の養育義務のある子供の母親が購入(資金は前澤氏が貸付け)
④資産管理会社が支払った利子がコンサルティング会社を経由して当該子供の母親に渡る。
という、一般の方には良く分からない、なかなかに手の込んだスキームでした。

今回のスキームの一番の目的は、受け手(養育義務のある子供の母親)の課税軽減になります。

社債を発行して、債権者が利息を分離課税(約20%)で受け取るという、いわゆる私募債のスキームは、お得に個人が法人から収入を得ることが出来るため、同族法人から同族へお金を流すスキームとして一昔前に流行ったスキームなのですが、
今は税制改正により規制されており、現行の税制では、同族関係者への社債の利息支払いに関しては、受け手は所得税等が総合課税(MAX55%)で課せられるルールとなっています。

今回前澤氏の取ったスキームは、この受け手の総合課税を避けるため、間に一社コンサルティング会社を挟むことで、受け手から見た利息を、「同族会社からの利息」⇒「一般会社からの利息」に換え、受け手の課税を安くする(総合課税⇒分離課税へ)という内容となります。

一般的に養育費は、前澤氏の個人資金を、個人から当該子供の母親へ直接支払う方法が取られるべきですが、そうすると、
1 法人から前澤氏への報酬支払時(個人資金にするタイミング)に、前澤氏にの所得税等の課税(MAX55%)
2 前澤氏から当該子供の母親への支払い時に贈与税課税(MAX55%)
と2重のコストが掛かってしまうため、
A 前澤氏を経由せず、直接法人経費として養育費を支払いたい。
B 法人から養育費を支払うのであれば、スキームを駆使して受け手が分離課税になるように渡したい。
という目的により、今回のスキームに至ったものと推察されます。

前澤氏のその後の発言を見ていると、
「今回の税務処理について、たとえ税理士チームに任せていたとしても、そして形式的には合法だったとしても、税務署の『否認』は否認。重く受け止めています」「今後は僕自身も現場に入り、リスクのある処理は完全に白と証明できない限り一切行わないように徹底します。大変申し訳ありませんでした」
と、故意ではなく見解の違い、自分の強い意志ではなく税務チームの提案に乗っただけ、というどこか他責のニュアンスが感じられますが、
個人的にはスキームの目的とやっている内容とを見れば、前澤氏が主体的に絡んでいることは間違いなく、租税回避を目的とした悪質なスキームという印象です。。。

個人的には尊敬する経営者だった分、とてもショックでした。。。

さらに信じられないのが、顧問税理士もこのスキームにモロに絡んでいるということです。
顧問税理士としては、自身が設立に関与したコンサルティング会社を噛ませることで、手数料収入や利息の一部を報酬として受け取ることができ、前澤氏に恩も売れると考えたのかもしれませんが(ここは推測です。)、今回のケースは脱税幇助と言われても仕方がないと思います。

今回は法人税調査だったため、当事者である前澤氏のみの対応で完結していますが、これが相続税調査であれば、困るのは相続人になります。

勿論可能な範囲で節税を目指すのは当然のことですが、目先の節税に目がくらみ過ぎて過剰なテクニカル節税スキームを組むと、結果的には相続人を苦しめることになりますし、大きく次世代に尾を引きます。

また過剰なテクニカル節税スキームは、手数料や報酬などで提案者(今回で言えば税理士やコンサル会社等)が得をするケースも多く、経営者と税理士の利害が一致し「楽観的な節税ストーリー」に基づいて検討が進むケースが多くあります。そして結果そういったスキームほど否認されている印象です。

様々な否認事例を見てきていますが、最終的に得をしたのはスキーム提案者・提供者だけというケースは多いのではないでしょうか。


事業承継対策を行う上では、「後継者にとって第一となるスキーム」、
すなわちテクニカルなスキームに依存するのではなく、
なるべくシンプルかつ簡潔な、かつ事業上の効果も、結果的に税務上の効果も見込まれるスキームを組むべきだと、改めて考えさせられました。

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