コラム
黄金株って本当に有効?
事業承継を検討する中で、「黄金株」という言葉を聞かれた方も多いと思います。
「黄金株」とは、一言で言うと「株主総会の決議を拒否(否認)できる株式」になります。
例えば、全100株の株式のうち、99株の普通株をAさんが、1株の黄金株をBさんが保有している場合、
Aさんが株主総会で議案を可決しようとしても、Bさんが拒否をすると可決できない、という事象が起こります。
実務上は、先代が黄金株を1株保有し、残りを後継者に渡し、後継者が暴走した場合は拒否権を発動し、抑止力を持ちながら事業承継を進めていくという使い方が多いです。
この「黄金株」ですが、セミナーなどでは推奨されることも多いのですが、個人的にはあまりお勧めはできません。
というのも、黄金株はあくまで拒否権しか持たないため、先代と後継者との仲が悪くなると、決議が何も決まらず、デッドロック状態になる事態も想定できるからです。
後継者の立場からしても、高い税金を支払って株式を受けたにも関わらず、物事は黄金株を持つ先代の承認無しでは進められないのであれば、非常に精神的な負荷になってしまいます。
万が一、黄金株を承継する前に先代に相続が発生し、事業に関係のない親族に黄金株が渡ってしまうと、目も当てられない状況になります。
事業承継のトラブルは、中途半端な決断や曖昧さの中から起こることも多いです。
・「この後継者に会社を任せる。」と先代が決意を持つまでは株式は後継者に譲らない。
・先代がそう思えるようになるまで、後継者との対話・意思疎通を徹底する。
・意思決定を行い、株式を後継者に譲ったのであれば、今後経営に口は出さない。
という覚悟があればそもそも黄金株を使用する必要がなくなりますし、
将来に禍根を残さないためにも、黄金株に頼らない事業承継を目指すべきだと感じています。