コラム
株価低減を狙った無理のある組織再編には注意!確実に税務否認されます!
令和7年1月17日に東京地裁にて、その後令和7年6月19日に東京高裁にて納税者と国で争われている相続案件があります。
内容は一言で言うと、「法人を活用した相続税低減の可否」になります。
案件の詳細は割愛しますが、大きな流れは以下の通りです。
・資産家が保有している現金(約40億)を非上場企業に出資
・その出資した非上場企業の株価をコントロール(約40億円⇒約20億円に)
・相続により、当該非上場企業の株式(評価20億円)を相続人に相続・納税。
・相続から3年後、相続人は当該株式を当該非上場企業に40億円で売却(企業側からみると自己株買い)
要するに、高額な相続財産(約40億円)を、法人を介すこと(相続対象を現金から株式に換えること)によりその財産評価額を半額(約20億円)にし、安い金額で申告・納税を行った上で、将来的には元の高額な評価額(約40億円)で現金を受け取ったという事例です。
嘘のような本当の話なのですが、
まず法人を活用することにより(組織再編を活用することにより)相続財産の評価額を下げ、将来的な自己株買いにより当初の高額な評価額で現金を得ることは、税法上は合法であり、可能です。
ただしそれが税務上否認されないかで言うと、ほぼ100%否認されます。
税法上、合法かどうかと、税務否認されるかどうかは、まったく別の話になります。
今回の事例も、地裁においては奇跡的に納税者側が勝ちましたが、高裁にて納税者が負けています。
節税商品のセールストークで「税法上は合法です。」という説明がよくありますが、正直実質的にはあまり意味がない謳い文句になります。
(常識的に考えておかしいことは税務否認される可能性が高いということですね。。。)
組織再編を行う(例えば2社保有をしている状態を、親会社/子会社のHD体制にするなど)と、結果的に非上場企業の株価が下がることは多いのですが、株価を目的に組織再編を行ってしまうと、結果大きなリスクを負うことになります。
組織再編や法人を介した取組みに関し、株式評価の税務否認を避けるためにも、以下の点を意識することが必要です。
◆否認されない組織再編のポイント
①組織再編や法人の活用は、その事業上の目的が最も重要。
⇒株価低減を目的とした組織再編はお勧めしません。必ず運用面で支障がでます。
②事業承継を検討し始めたタイミングでなるべく早期に取り組む。
⇒相続直前の取組みは非常にリスクが高いです。
③先代、後継者、税理士、幹部など、次世代を担う幹部を巻きこんで将来の事業体制の検討を行う。
⇒検討者を絞りすぎると提案内容や実施内容が偏ります。
せっかく事業承継を行うのであれば、事業上の価値がある承継の形を模索し、結果として株価効果も得られるという体制構築が理想です。