コラム
M&Aを検討している場合、HDは設立しない方がよい?M&A検討と組織再編のアレコレ
M&Aを検討している場合、M&A実施前にHDを設立するかを検討されるケースも多いと思いますが、
ネットなどを調べると、おそらく以下の2つの結果が出てくると思います。
「M&Aを予定している場合、M&A前にHD化をすると損する。」
「M&Aを行うのであれば、M&A前にHD化をしておいた方が得する。」
・・・どっち??
となってしまいますよね。結論から言えば、M&Aを検討しているオーナーの状況や意思により、
どちらも正解になりえます。
今回はこのテーマを深堀りしていきたいと思います。
◆「M&Aを予定している場合、M&A前にHD化をすると損する。」と言われる理由
個人の手取り額を主軸に考えると、上記の内容が正しくなります。
個人が自分の保有する株式を売却した場合、所得税上は譲渡益に対して約20%の分離課税となり、残り80%部分が手取りとなります。
一方、HD化した後に、事業会社(HDの子会社)を売却してしまうと、譲渡益に関してはHDに法人税が約35%ほど掛かり、法人から個人にお金を渡そうとすると、またそこで所得税が掛かってしまい、個人が得る手取額としては非常に損をしてしまいます。
【1億円で売却・利益が1億円の場合】
①個人が売却した場合には、税金(所得税)が約2,000万円・個人手取り額が8,000万円となる。
②HD化し、HDが売却した場合には、税金(法人税)が約3,500万円・法人手取り額が6,500万円となり、
法人から個人へ6,500万円を渡す場合、累進課税で更に所得税が課税(MAX約50%)される。
◆「M&Aを行うのであれば、M&A前にHD化をしておいた方が得する。」と言われる理由
財産を後世に残すことを主軸に考えると、上記の内容が正しくなります。
例えば個人がM&Aにより10億円で株式を売却する場合、個人の手取り額は約8億円となります。
この場合、8億円を相続発生時までに使い切れれば問題ないですが、使い切れない場合は残額に対して相続税が発生します。
仮にHD化した後にM&Aをした場合、HD手取額は6.5億円と低くなりますが、
HDの業態や保有資産次第では、相続税評価を抑えることができ、現金で残すよりも割安に財産を後世に残すことが可能です。
また、例えば売却する会社が自家用地などを持っている場合、
HDに当該不動産を移すことで、M&A後も安定収入を得ることも可能です。
※個人でもこのスキームは可能ですが、不動産を売却予定法人から個人に移す過程で税金が課せられるのに対し、
売却予定法人から100%親会社であるHDに資産を移す際は、基本税金は掛かりません。
(※不動産流通税は共に掛かります!)
◆実務上の判断
最終的には、M&Aに伴い、売却予定法人に後世に渡したい財産(不動産)が無い場合、M&Aの売却金額につき個人で使い切れるような場合には、M&A前にHD化を行わずに直接個人から譲渡先に売却するケースが多いです。
一方で、後世に残したい財産がある場合、売却金額が多額となり、個人では使い切れない場合には、HD化後にM&Aを行うケースが多くなります。
親族内承継を検討しつつ、将来はM&Aも視野に入れているというようなケースでは、
相続リスクも加味し、HD化をした上で将来の選択肢に備えるケースも実務上は多く、
どちらにしても法人の状況・後継者の状況・取り巻く環境を加味して決定をしていく必要があります。