コラム
非上場企業の株価の評価方法はどのように、そしてどのタイミングで改正される?独断と偏見による考察・・・
前回のコラムにて、会計検査院から国税庁への指摘により、将来的に非上場企業の株価評価方法が改正される可能性に触れましたが、今回はその改正内容とタイミングにつき、私の独断と偏見で予測していきたいと思います。
そもそものお話として、国(国税庁)が非上場企業とそのオーナーに対してどのようなスタンスかと言いますと、
①非上場企業の株式に関しても、取引市場は無いとは言え価値はあるとみなして課税は絶対にしたい。
②創業家(オーナー)が負担すべき納税資金に関しては、会社からの配当(第一希望)や役員報酬(第二希望)によって賄ってほしい。
③それでも無理な場合には、相続時に限って自己株取得なども駆使して賄ってほしい。
④それでも払えない企業、あるいは将来に渡って代替わりを行うような継続企業に関しては、事業承継税制を活用するという方法も用意する。
という内容なのかと思います。あくまで個人の所感ですが。。
国としては、①のスタンスは不変で、基本的には②により株式の事業承継を完了してほしいが、
それでも難しい企業の救済措置として、③④を設けているイメージです。
上記を前提として、今回の話を見ていきたいと思います。
【評価方法 改正のタイミング】
過去の非上場企業の株式周りの税制改正に関しては、直近では以下のタイミングで行われています。
・2017年(平成29年): 類似業種比準方式の計算式が変更
・2018年(平成30年): 事業承継税制 特例措置がスタート
類似業種比準方式に関しては、以前は直前期の配当・純資産・利益の3つの要素の内、利益に関しては他の要素の3倍加味をする(利益が株価に与える影響が大きくなる)という計算方法となっており、
先代が退職金を取得した後や、大規模な投資を行った後、特別損失が出た後などは、株価が非常に安くなるといった特徴があり、実務上はそういったタイミングに合わせて株式を後継者に渡すというケースが多くありました。
平成29年改正により、株価を抑えることが難しくなり、結果株式の移転による納税が難しくなるケースも想定されましたが、「株価が高くなり、税金を払うのが難しくなったのであれば、事業承継税制を使い易くするので、そっちを使えば良いではないか。」と言わんばかりに、その翌年の平成30年に事業承継税制の特例措置が発表されました。
そう考えると、その特例措置の期間が2027年(令和9年)に終わることを考えると、
・2027年(令和9年):株価算定の方法が改正
・2028年(令和10年):事業承継税制の改正(もしくは特別措置の第二弾の発表)
という可能性も高いのでは、と推察しております。
【評価方法 改正の内容】
会計検査院の指摘内容は、類似業種比準方法による類似業種比準価額と、純資産価額方式による純資産価額との差を問題視しているということで、改正の方向性に関しても、類似業種比準価額そのものを純資産価額に近づけるか、併用方法(類似と純資産の併用による株価算定の方法)を純資産価額に近づける内容になるかと思います。
◆可能性1 類似業種比準価額を純資産価額に近づける
現行の類似業種比準価額は、評価会社と同業種の上場企業とを比較し、配当・純資産・利益がそれぞれ何倍の力があるのかをベースに株価を算定しています。
例えば、配当は1倍、純資産は3倍、利益は2倍と評価された場合、TOTALで見れば上場企業の2倍(1倍+3倍+2倍=6倍/3要素)の力があるとみなされて、上場企業の株価を基準に×2をして類似業種比準価額を算定します。
改正を行う場合、この純資産の要素を他の要素の2倍、3倍にて株価を算定する可能性があります。
仮に純資産の要素を3倍にして上記の例に当てはめると、配当は1倍、純資産は3倍×3の9倍、利益は2倍となり、
TOTAL2.4倍(1倍+9倍+2倍=12倍/5要素)となり、現行の株価と比較して0.4倍分高額となります。
※平成29年以前は利益が3倍考慮されていました。
ただ類似業種比準価額を純資産価額に近づけるのであれば、そもそも類似業種比準価額を設ける意味はありませんし、そのあたりは考慮してほしいですね。。。
◆可能性2 併用方法の併用割合の変更
現行では、規模の大きい会社に会社に関しては、類似業種比準価額を100%適用することができますが、
これの比率を減らし、大会社においても純資産価額を適用するという可能性はあります。
ただし大会社にも純資産価額を適用する場合、株価算定が非常に大変となるため(全ての資産負債の相続税評価換算が必要)、実務的な負荷や納税者の適切な納税準備等を考慮するのであれば、こちらも避けてもらいたい改正ではあります。
大きな改正の可能性は上の2つになります。
ここは繰り返しにはなりますが、類似業種比準価額は、純資産価額と差をつけることに意味があるため、差を埋めるというのは制度趣旨には反した改正となりますし、
もし株価算定方法を改正するのであれば、表面的な改正に留まらず、「そもそも非上場企業株式に対する課税をどのように考えるのか。」という根幹の部分の議論が避けて通れないと感じています。
どちらにしましても、株価の算定方法がどのように変わるかが不透明であり、かつ納税者有利には変わらない可能性が高いため、
将来的に後継者に株式を渡すことが確定している場合には、なるべく早い移転を検討されても良いと思います。